蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
「・・・へぇ。慧がお前にあげたもの、ねぇ・・・」
「・・・っ」
「妹の誕生日に髪留め、か。・・・やっぱ普通じゃねぇよ、お前ら」
卓海はうっすらと笑い、カシャッとシートベルトを外した。
そのまま上半身を捻り、横から絢乃の顔を覗き込む。
───その目によぎる、妬けるような怒りと切なさ。
突然態度の変わった卓海に、絢乃は驚いて目を見開いた。
卓海の視線はどんどん険しく、鋭くなっていく。
・・・まずい。
と本能的に感じ、絢乃はとっさに車から出るべくシートベルトを外そうとしたが、その手をすかさず卓海が掴む。
「・・・普通はな。妹の誕生日に、そんなものは贈らねぇよ」
卓海はじっと絢乃を睨むように見つめながら言う。
その瞳に苦しみの影を見、絢乃は胸がズキッと痛むのを感じた。
・・・なんだろう、これ。
なぜ卓海は、こんな表情をするのだろう。
絢乃は卓海を見つめながら、戦慄く声で言った。