蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~




卓海の唇が再び絢乃の唇に重なる。

逃げようとしても、卓海の手に頭を固定されているため、逃げることができない。

しっとりした、柔らかい舌が狂ったように絢乃の口腔を侵していく。

絢乃は混乱しながら、卓海の唇を受け止めていた。

絢乃の心に、切ない痛みが広がっていく。

痛みは涙となり、絢乃の目尻から頬を伝って零れ落ちていく。


なぜ、卓海はこんなことをするのか・・・。

いくら道具だとしても・・・これは、あんまりだ。

卓海にとって、自分は一体何なのだろうか・・・。


ショックで放心しかけていた絢乃だったが、卓海の手が襟元に触れたことに気付き、はっと息を飲んだ。

いつのまにか唇は絢乃の首筋に移動し、その感触に体の芯がゾクッとする。

そして、卓海の手がシャツワンピースのボタンに掛かった瞬間。

───絢乃の脳裏に、あの記憶が一気に蘇った。


< 49 / 190 >

この作品をシェア

pagetop