蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
卓海はククッと笑い、絢乃を見た。
・・・その、凶悪な笑み。
けれどその笑みに苦しみの影を感じ、絢乃はなぜか胸がきゅっと痛むのを感じた。
「今日でお役御免のハズだったのに。残念だったな」
「・・・っ・・・」
「ペナルティだ。一か月延長する。─── せいぜいオレを楽しませるんだな?」
卓海の言葉が、視線が、絢乃の胸に突き刺さる。
・・・一か月延長された、ということより・・・
卓海のこの視線が、瞳越しに向けられる感情が・・・なぜか、とても痛い。
絢乃はぐっと唇を噛みしめ、バッグを取って車から降りた。
その眼には涙が滲み、視界がぼやけている。
絢乃はそのまま、振り返らずにマンションの方へと駆け出した。
───多分、これからの一か月は、これまでの一か月とは違う一か月になる。
そんな予感がした・・・。