蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
<side.卓海>
23:00。
卓海は自室のベッドの上で、ヘッドボードに寄りかかり掌をじっと見つめていた。
・・・掌にあるのは、あの給湯室で絢乃が落としていった髪留めだ。
髪留めはシルバーでできており、リボンの形をしている。
リボンの輪郭に沿って小さなピンクルビーとエメラルドが嵌めこまれてあり、優美で女性らしい雰囲気の髪留めだ。
「・・・っ・・・」
卓海はそれをぐっと握りしめた後、勢いよく壁に投げつけた。
カシャンという悲鳴のような金属音の後、髪留めがカランと床に転がる。
金具が外れ、髪留めは本体と留め金部分に分解してしまった。
無残に壊れたそれを、卓海は昏い瞳でじっと睨みつける。
「・・・」