蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
卓海が自分を遠ざけようとするなら、自分も卓海を嫌いになればいい。
好きになるより嫌いになる方がずっと簡単だ。
───そう思っていた。
けれど卓海を嫌いになろうと思えば思うほど、卓海の面影が脳裏に蘇る。
自分の前でだけで見せてくれた、あの心からの笑顔が・・・
なぜか、忘れられない・・・。
絢乃はソファーに座り、茫洋と視線を彷徨わせていた。
その姿を見た慧が怪訝そうな顔をし、絢乃の前に歩み寄る。
「・・・どうしたの、アヤ?」
「あ、慧兄・・・」
絢乃は慌てて首を振り、無理やり笑顔を浮かべた。
───慧に心配をかけるわけにはいかない。
しかし勘の鋭い慧は眉根を寄せ、絢乃の向かいに座る。