蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
5分後。
絢乃は第二の会議室で卓海と向き合っていた。
卓海は明らかに不機嫌な様子で、何やら書類を手にしている。
・・・その目に漂う、紛れもない怒り。
背筋を固まらせた絢乃に、卓海は低い声で言う。
「・・・さっき、オレのところに関東電算とかいう会社から連絡が来た。なんでもデータベースの見積の件で、オレに挨拶に来たいらしい」
卓海の言葉に、絢乃は目を見開いた。
関東電算は、絢乃がRFPを送った会社のうちの一社だ。
しかし、絢乃のところにはまだ連絡が来ていない。
なのになぜ、卓海のところに連絡が来たのか・・・。
「・・・多分、相見積で他の会社を出し抜きたいというところなんだろうが。だが、担当のお前をすっ飛ばしてオレに連絡をよこした時点でこいつらは脱落決定だ」
「・・・っ・・・」
「礼儀を重んじない会社は仕事もそれなりだ。そういう会社と取引することはオレは認めない。・・・でもな、絢乃。問題はそこじゃない」