蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
絢乃は卓海の怒りの理由を理解し、息を飲んだ。
───自分は、秘密保持契約を結ぶ前にRFPを送ってしまった。
内部情報をリークしたと言われても仕方のない行為だ。
青ざめる絢乃の前で、卓海はバンと書類を叩き、言う。
「ベンダーに接触する前にオレに連絡しろって言っただろう? ・・・なぜ勝手にやった? ホウレンソウは社会人としての基本だろうが!?」
───怒りに満ちた、その声。
絢乃は蒼白になりながら卓海の言葉を聞いていた。
卓海の言葉は衝撃となって絢乃の胸に広がっていく。
卓海が怒るのも尤もだ。
自分は、とんでもないことをしでかしてしまった・・・。
顔から血の気が引いていく。
絢乃は震える声で言った。
「・・・すみませんでした。ベンダーには、RFPを破棄するよう私から連絡します」
「今更遅い。一度出てしまった情報は取り返しがつかない」