蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
卓海は冷たい声で続ける。
絢乃は悄然と俯いた。
・・・どうすればいいのか・・・。
肩を震わせる絢乃に、卓海はひとつため息をつき、言った。
「・・・こうなったら各社と秘密保持契約を結ぶしかない。法務部にはオレから連絡しておく。お前は相見積のスケジューリングをしておけ」
「で・・・でも・・・っ」
「いいから行け。これ以上、オレの手を煩わすな」
卓海は淡々と言う。
絢乃はぐっと唇を噛みしめ、頭を下げた。
「・・・わかりました。失礼します」
───これは、自分の失態だ。
少し考えれば予想がついたことなのに・・・。
卓海に迷惑をかけてしまった・・・。
視界が涙で霞みはじめる。
絢乃はそれを隠すように、急ぎ足で卓海の前を辞した。