蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
4.昏い執着
<side.卓海>
絢乃が辞した後。
卓海はため息をつき、片手で目元を覆った。
───胸の中に、得体のしれないドロドロした黒いものが渦を巻いている。
あの、お台場に行った日の夜から・・・。
それは卓海の心を黒く塗り潰し、軋むような痛みとともに卓海の心を切り裂いていく。
卓海はぐっと目を強く瞑った。
絢乃はこれまで、RFPを作ったことはない。
RFPをまるで知らなかった人間が、いきなりRFPを作ろうとは普通は思わない。
・・・恐らく、慧の入れ知恵があったのだろう。
そう思うと、抑えられない怒りが胸に沸き起こった。
秘密保持契約のことは、絢乃にちゃんと言っておかなかった自分にも責任はある。
けれど一度胸を覆った黒い怒りは、止める間もなく絢乃に向かってしまった。
・・・絢乃の、涙に滲んだ瞳が脳裏をよぎる。