求*幸福~愛しい人はママだった~【完】
顔に熱を感じたまま、時計を確認すると、すでに5時近く、彩乃は慌てて立ち上がり話し出した。
「あっ!もうこんな時間ですね!実家で紗彩が待っているので、今日はこれで失礼しま…あ…失礼する、ね?」
「ハハッ、気を付けろよ。そうかぁ…上手くいったら夕食もとか勝手に考えてたから、残念だけど…うん、一日目だしね、さあやちゃん、だっけ?ママのこと待ってんだろうしな、今日は我慢する!」
娘、紗彩のこともひとまず受け入れてくれた様子に安心し、くだけるとなかなか甘えたで意地悪な翔哉に見送られながら、マンションを出た。
このマンションは滝沢翔哉が住んでいると、知られているそうで、翔哉はエントランスからは出ずに、振り返る彩乃にそっと手を振ってくれた。
朝とはまるで違う気持ちで今は駅に向かっていた。