求*幸福~愛しい人はママだった~【完】
「佐渡さん…腕…痛いので、離してもらえませんか?」こんな場面なのに恐怖はなくて、落ち着いた声で話すことが出来た。
「あっ…す、すみませんっ…つい………」少し我に返ったのか、腕を離してくれて、一歩、下がってくれた。
それを見て危害はないと判断したのか、村田は彩乃の後ろに下がり様子を伺うだけになった。
…………しばらく無言でどうしようか、と思ったとき「はぁ~……やっぱり、僕ではダメです…よね…」項垂れながら話す佐度を見て、直感で話がちゃんと出来ると判断し、「以前の、お店の時の件は…私なりの考えですが、大学で上手くいかないことでもあって、でしたか?」と問いかけた。
「えっ…どうして…」佐渡は驚きを隠さずに声を出した。
「仕事を一緒にしていた佐渡さんからは深い悪意を感じることはなかったですし…あの数日、辛そうだったなと、感じたので」