求*幸福~愛しい人はママだった~【完】
そして、「聞いてくれますか?」と話し出した。
「私…あの女性に会う前に、仕事場の元同僚にも会ったの…少し揉め事があった人で、一瞬、この人がもしかしたらって体が固くなった…でも、違って。村田さんもちゃんとすぐ傍にいてくれて、安心したところに女性がナイフを…その時ね、紗彩の顔と一緒にあなたの…翔哉の顔も頭に浮かんだの…会いたいっ、死にたくないっ、て…。でも、あの人が自分にナイフを向けたときには無心だったと思う、死なないでって、それだけ。意識がなくなるときなのかな、また、翔哉のこと思ってた、まだ、言いたいことがあるのにって…」そこまで話してチラリと俺を見る。
生死がかかった場面で大切な娘と共に俺を思い、会いたいと思てくれた…むちゃくちゃ嬉しい話だった。
だが、まだ続きがあるらしい。
なんだか、ドキドキしてきた。
目が合ったまま何となく見つめあってしまった。