天神学園高等部の奇怪な面々33
「い゛ぎゃあぁああぁ゛あ゛あ゛っ!」

途端に、学生寮全体に轟くほどのスペシャルバカの悲鳴。

喜屋武は母方が魔術師の家系らしく、『痛み』に関する無詠唱魔術を扱える。

紋様を通して自らの体に痛みを与える事で、その数十倍の激痛を対象者に伝える事ができるのだ。

しばらくして。

「てめぇキャンペーンッ!またやりやがったなっ!」

制服の着替えもそこそこに、スペシャルバカが部屋から出てくる。

「遅刻しそうだから起こしてあげたんですよ…小夜さんも迎えに来てましたし」

キャンペーンというのは、喜屋武の渾名。

『喜屋武 ペイン』というおかしな名前をもじったものだ。

「畜生、修学旅行から帰ってきたら覚えとけよキャンペーンッ!」

『それじゃあ喜屋武さん、行ってきます』

揃って走り出すスペシャルバカと無口少女を、手を振りながら見送る喜屋武。

さて、玄関の掃除は済んだし次は学生寮の中でも…そう思って歩き出した喜屋武は。

「あら?」

足元に携帯が落ちているのを見つける。

いまだにスマホに替えずに古い機種を使い続けている、スペシャルバカの携帯だ。

「大変、落として行っちゃったのね…」

携帯を拾い上げる喜屋武。

「あとで『転移』の魔術で届けてあげよう…」

この事が、今年の修学旅行を大混乱に陥れる事になる…。

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