【砂漠の星に見る夢】
クフの部屋はヘレスの部屋と同様、赤と黄金で統一された華やかな内装にも関わらず、どんよりとした暗い雰囲気に包まれていた。
クフの侍女達はヘレスの姿を見るなり跪き、「ヘレス様、クフ様はもうずっと食事を採られないのです」と悲痛な声でそう告げた。
ヘレスは眉をひそめ、ベッドにうつ伏せに横たわるクフを見下ろした。
「クフ王子、一体どうしたというのですか」
「いえ、なんでもございません」
とクフは顔を上げようともせずにそう漏らした。
尋常ならぬ様子に、ヘレスは胸を痛めた。
「可哀相に、ファラオがネフェルばかりを贔屓にするから落ち込んでいるのですね」
「……そんなんじゃありません。母上には、どうしようもできぬことです」
吐き捨てるようにそう告げたクフに、ヘレスは目を見開いたあと、「この私にできぬことはありません。なんでもそなたの願いを叶えて見せましょう」と身を乗り出した。
「…………」
一瞬、二人の間に沈黙が走り、ややあって、
「……私は、苦しい恋をしております」
と低い声でそう呟いた。