【砂漠の星に見る夢】
「可哀相なクフ王子。そんな兄からたった一つくらい奪っても私は許されると思うのです」
切々とそう告げたヘレスの言葉に、クフは今まで押し込めてきた兄であるネフェルに対するコンプレックスのすべてが、浮き彫りになってきた。
そうだ、私の欲するものをいとも簡単にすべてを手に入れて来た兄上。
彼女くらい奪ってもいいだろう。
……いや、奪ってでも欲しいのだ。
クフはヘレスの手をしっかりと握り、
「母上、あなたのお力をお借りしてもいいでしょうか?」と強い眼差しを見せた。
「ええ、もちろんですよ」
ヘレスは内面の企みとは裏腹に、まるで聖母のような美しい笑みを見せた。