【砂漠の星に見る夢】
急に可笑しくてたまらなくなり人知れず笑みを浮かべ、小走りで町外れの人気のない古い井戸に駆け寄った。
井戸を前にゴクリと息を呑み、意を決したようにその中に飛び込むと、一瞬体が浮いたような感覚がし、気がつくと『教会』の床の上に座り込んでいた。
落ちた感覚でもなく、はたまた引っ張られるような感覚でもなく、井戸から入ると教会の床に座っていたという不思議な現象にイシスは複雑な表情を浮かべた。
牛革の椅子に腰をかけていたネフェルは、イシスの姿に屈託ない笑みを見せた。
「やあ、待ってたよ」
イシスは歯にかんだ笑みを見せ、ゆっくり立ち上がった。
「……町は明日のあなたの誕生日の話題でもちきりよ」
「宮殿の中でも、もちきりだよ。それよりイシス、こっちに来て」
そう言ってネフェルは手を差し伸べ、モニターの前に来るように促した。
「ええ」
なにかしら、とイシスはネフェルの横に立ち、大型モニターを見上げた。
「見せたいものがあるんだ」
そういってネフェルがキーを押すと、モニターに真っ青な球体が映し出された。
その美しく青い球体に、「わぁ、なんて綺麗なの?」とイシスは目を輝かせて身を乗り出した。