【砂漠の星に見る夢】
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――夕刻から始まった宮殿での誕生祭は盛大なものだった。


妻ターナと共に新しく誕生した命に喜びを噛みしめネフェルに、ファラオも喜びに目を細めていた。


「ネフェル、赤ん坊をここへ」


ファラオの言葉に二人は「はい」と生まれて間もない赤子をファラオに手渡して跪いた。


ファラオは、むずがる赤子を見ながら、おお、と声を漏らし、


「幼き頃のネフェルに瓜二つだ」


と目尻を下げながら、ネフェルを見た。


「父上、その子に名をお願いします」


跪いたままそう告げたネフェルに、ファラオは強く頷いた。


「この子の名は、もう決めてある『ヘムオン』だ。良い名だろう」


『ヘムオン』とは太陽信仰の拠点であるヘリオポリスを意味した太陽信仰色の強い名前だった。星信仰『オシリス』の代表的存在であるネフェルの子にこの名前をそそのかしたのは他でもなくヘレスであり、そのヘレスはネフェルの方を見て小気味よさそうに笑ったが、思惑とは裏腹ネフェルは心底嬉しそうな笑顔を見せた。


「良い名をありがとうございます」


予想とは違う反応に、ヘレスは面白くなさそうに顔をしかめ気付かれぬように舌打ちし、ファラオは愉快そうに笑いながら、ターナに視線を移した。
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