【砂漠の星に見る夢】

「それにしても、ターナは幸せ者だのう。
ネフェルはそなた以外に妻を娶らず、そなただけを大事にしている」


その言葉にターナは恥ずかしそうに頬を赤らめながら、頭を下げた。


「はい、光栄極まりなく思っております」


皆が和やかに語らう中、「兄上、おめでとうございます」とクフの声が響き、ネフェルは驚いたように顔を上げた。


「クフ、久しぶりじゃないか」


一方のファラオは、クフを見て訝しげに顔をしかめ、


「そなたが公の場に姿を現すのも久しぶりだな。数年前に囲った愛妾に執心するあまり、大事な妻をないがしろにするのは、あまり感心なこととは言えないぞ」


と嗜めるようにそう告げた。


「ファラオ、妾ではなく『妻』でございます。
今日はまだファラオにお目通りしていなかった、私の妻を連れて参りました」


と告げたクフに、ホールにいた王族の皆は、ほお、と興味深そうに身を乗り出した。


クフが数年前に美女を囲い、その女性に大層心を奪われているという噂は広まっていたが、その美女の姿を見た者は誰もいなかったからだ。



一体、どんな女性なのか、と皆が注目する中、「彼女をここへ」とクフは声を上げた。


< 136 / 280 >

この作品をシェア

pagetop