【砂漠の星に見る夢】
「ファラオ、私の妻イシスです」
跪いてそう告げたクフに、イシスは我に返り自分もすぐに跪いた。
「イシス……女神の名。その名に負けぬ美しさを誇る。クフ王子が彼女ばかりに執着するのも分からないでもないな。しかし他の妻もそなたの大事な妻。決しておろそかにすではないぞ」
そう言って厳しい視線を向けたファラオに、クフはパッが悪そうに目を伏せながらも「はい」と強く頷いた。そして顔を上げ、驚き言葉もない様子のネフェルの顔を目の当たりにし、クフの中に言い様のない優越感が襲ってきた。
今まで自分は何をしても、兄には敵わなかった。
でも今の僕は兄上に勝ったんだ。
そんな思いが全身を貫き、これみよがしにイシスの肩を抱き、ネフェルに笑みを見せた。
「兄上、王子のご誕生、本当におめでとうございます」
そう告げたあとイシスに視線を送り、「イシスも兄上に祝いの言葉を」と肩に乗せた手に力を込めた。