【砂漠の星に見る夢】
イシスはゆっくりとネフェルに視線を合わせ、彼の隣に寄り添う妻・ターナとその腕の中の生まれたばかりの赤子を見て、息が苦しくなるほど胸が詰まることを感じた。
―――ネフェル。あれから何年も経つというのに、あなたはちっとも変わらないのね。
美しい金髪に、褐色の肌、輝く緑の瞳。
今も変わらぬ美しいネフェル。
あなたはとても奥さんを大事にしていて、今も他に妻は囲っていないと訊く。
妻は一人でいい、といったあの時の言葉は嘘ではなかったのね。
その妻が自分ではないことが、とても苦しい。
そう思いながらキュッと拳を握り、それでも笑みを見せた。
「……ネフェル様、ターナ様、王子のご誕生、心よりお喜び申し上げます」
そう告げたイシスに、ターナは嬉しそうに「ありがとう」と微笑み返し、ネフェルは何も言わずに、ただ目を開いてイシスを見ていた。
ヘレスは呆然とするばかりのネフェルの姿を見て、クックと笑みを浮かべていた。
――驚きのあまり声も出ないか、ネフェル。そなたの愛した女は今や我が息子クフの妻。
悔しくて悔しくてたまらないだろう。
へレスは大声で笑いたい気分を堪え、扇子で口元を隠していた。