【砂漠の星に見る夢】
「だって、逃げることなんてできないわ。
扉の前には、常に番人、窓の外から飛び降りられる高さでもなく、飛び降りて死ぬことも許されない。だって両親を人質にとられていますもの。どこにいるか分からないんですもの。私がいなくなったなら父母がどんな目に遭わされるか分からないんだもの! 逃げることなんてできやしないわ!」
イシスは涙を浮かべながらそう声を上げ、はぁはぁと息を切らし、
「……今日は疲れましたのでお引取りください」
と脱力したように背を向けた。
「……イシス」
クフは切なく目を細め、堪え切れないようにイシスの足にしがみついた。
「……王子?」
イシスは戸惑いながら、自分の足にしがみつくクフを見下ろした。
「いくら憎んでもらって構わない。
何も思われないよりも憎まれる方がいい。憎しみでもなんでも僕のことを思ってくれるなら、どんな感情だってかまわない。僕はあなたを側に置くためなら、どんなことだってする!」
身体を小刻みに震わせ、泣き出しそうな声でそう言うクフに、イシスは言葉を詰まらせた。
「兄上のことを想っていていい、僕を憎んでいい。でも側にいて欲しいんだ」
足にしがみついたまま、切なくそう告げた。
「―――王子」