【砂漠の星に見る夢】
困惑しながらクフを見下ろしていると、「ヘレス様のおなりです」と侍女の声が響いた。
その言葉にクフは我に返ったようにイシスから離れ、ゆっくりと立ち上がった。
ヘレスは颯爽と部屋に訪れ、クフを見て弱ったように眉を寄せた。
「クフ王子、ファラオも忠告していましたが、もう少し他の妻のところに通ってもらわねば困ります。最近、私のところにも妻たちの親から苦情がきているのですよ。
特にメルタリスやヘヌットセンは、あなたがファラオになる為に必要不可欠な大事な妻です。今日、公の場で絶世の美女を紹介し、他の妻が嫉妬に身を焦がしているのです。今しばらくは第一王妃や第二王妃の元に通うように」
優しいながらも強い口調でそう告げたヘレスに、クフは不満そうな表情を浮かべながらも
「はい」と頷いた。
イシスはそんなクフを眺めながら、本当に母親の言葉には逆らえない人なのね、と苦笑した。しかし、しばらく彼が自分のところに来なくなると思うと気が楽だった。
クフはそのままヘレスと共に部屋を出て行き、イシスは脱力し、ふぅ、と息をついた。