【砂漠の星に見る夢】
イシスは何も言うことができず、ただターナに視線を向けていると、彼女はそっと顔を上げた。
「ネフェル様は、ずっとあなたを探しておいででした」
えっ? と目を開いたイシスに、ターナは自嘲気味な笑みを浮かべて、そっと俯いた。
「ネフェル様は私と結婚した後もあなたのことを探し続け……、私は長い間、名ばかりの妻でした」
ターナはそう言って切ない表情で目に涙を浮かべながら、顔を上げた。
「それでも……それでも良かったんです。
ネフェル様は、とても優しくしてくださりました。大事にしてもらったと思っています。女として妻として求められなくても、あの方の側にいられるならと思い、ネフェル様にお仕えしてきました」
何も言えずにただ目を開くイシスの視線から逃れるように、ターナは目をそらした。
「ずっと私は名ばかりの妻であることを覚悟していたのですが、結婚して4年を過ぎた頃……そう、ネフェル様が二十歳の誕生日を迎えられたときに私を妻にしてくださったのです。
その時の喜びは言葉では言い表せません。ようやくネフェル様の妻になれた喜びに泣きました。
そうして子供を授かり妊娠中あの方は本当にお優しくて、これ以上の幸せがあるのかと、その幸せを毎日噛み締めて生きました。そして無事出産し、その子の誕生祭で……」
ターナはそこまで言って唇を噛んで拳を握り締め、目からポロポロと涙が零した。