【砂漠の星に見る夢】
「その誕生祭で……あなたが現れるなんて……。ようやく……ようやく本当の意味であの方の妻になれたと思ったときに、あなたが現れるなんて……」
身体を小刻みに震わせながら苦しくそう漏らすターナに、イシスは言葉を詰まらせた。
「ターナ様……」
イシスは、ターナの苦しみを受け取り、胸が締め付けられるように痛んだ。
……私はこの5年間、死よりも苦しい思いをしてきた。
愛してもいない男の妻となり、自由を奪われ、生ける屍となっていた。
ネフェルのことだけを思い、生き永らえてきた
どれだけ、ネフェルの妻となった女性を羨んだだろう。
しかし、彼女も苦しんで来たのだ。
震えるターナの手に触れようとすると、ターナはその手を払い勢いよく立ち上がった。
「どうして……どうして今更あなたが現れるの? 今更現れてネフェル様の心を奪わないで! あなたはクフ王子の妻なんでしょう? あの方を惑わせないで!」
喉の奥から絞り出すように悲痛に叫んだターナに、扉の外で待機していたターナの侍女たちが、「失礼します!」と部屋に飛び込み、「ターナ様、お気をお静めくださいませ。産後のお体に触りますよ」と興奮する彼女を宥めた。