【砂漠の星に見る夢】
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侍女からターナがイシスの元に訪れ、取り乱したという報告を受けたネフェルは血相を変えて、ターナの元に向かった。


ネフェルがターナの部屋に訪れた時には、彼女はベッドの中で嗚咽を漏らし泣いていた。


「ターナ……」


ネフェルはベッドに腰をかけ、うつ伏せにむせび泣くターナの頭を優しく撫でた。


「私……ネフェル様があの美しい方をクフ王子からさらってどこかに行ってしまう気がして、怖くてたまらないんです」


ターナは涙まみれの顔で、ネフェルを見た。


「ネフェル様が私もヘムオンも捨てて、あの方をお選びになる気がして……」


嗚咽を漏らしてそう告げたターナに、ネフェルは言葉を詰まらせた。


―――誕生祭でイシスの姿を見たとき、そう、彼女がエメラルドのネックレスをしている姿を見たとき、何もかもかなぐり捨ててイシスの元に駆け寄り、そのまま


どこか遠くに行っても構わないと思うほどの衝動にかられた。


大事な妻も、望んで誕生したヘムオンも、あの時は頭に浮かんでこなかった。


ターナはそのことを感じ取ったのだろう。



ネフェルは押し寄せる罪悪感の中、ターナを優しく抱きしめた。
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