【砂漠の星に見る夢】
「ターナ、あなたにそこまでさせてしまったのは僕の責任だ。すまない」
苦しくそう告げたネフェルに、ターナは腕の中で首を振った。
「……いいえ、私の浅ましさです。
私はあなたが誰に心を奪われようと、例え嫉妬心を抱いたとしても受け入れられるのです。王室の妻は夫が何人妻を迎えようとも、それを受け入れなければいけない宿命です。
ですが、あの方はクフ王子の妻。妻に迎えることも、愛し合うことも許されぬ方です。その苦しさに耐えかねて、あなた様が彼女をさらってどこかに行ってしまうことが怖くてたまらないのです」
そう言ってターナは胸にしがみついて涙を流し、ネフェルはそんな彼女の頬にそっと手を触れた。
「ターナ、僕はあなたの夫であり、ヘムオンの父親だ。彼女と姿を消したりはしないよ」
そう言って再びターナの体を優しく抱き寄せ、背中を撫でた。
「ネフェル様、ネフェル様」
嗚咽を漏らし泣き続けるターナの背を撫でながら、ネフェルは気付かれぬほどに小さく息をついた。