【砂漠の星に見る夢】
プロローグ
「よーし、今年の夏休みは海外旅行に行くぞ」
それは夏休みを目前にした7月上旬の夕食時。
帰宅するなりそう声を上げた父に、リビングにいた家族はポカンと目を開いた。
「海外旅行?」
寝耳に水、青天の霹靂、棚からぼた餅。
この場合、当てはまるのは寝耳に水かもしれない。
海外旅行なんてまったく縁がなく、今年の夏休みは去年同様せいぜい九十九里にある会社の保養所行って終わりだろうと踏んでいた私・小林菜摘にとってこのニュースを喜ぶ前に疑う気持ちすら出て来てしまう。