【砂漠の星に見る夢】
……この人を男として愛せることはないだろう。
それでも我が息子ジェドやヘムオンを想うように、この人のことを想ってあげることが大事なのかもしれない。
イシスはクフの髪をなでながら、そう思った。
クフはイシスの膝にしがみつきながら、とめどなく涙を流した。
彼女に優しい言葉をかけられ、そのぬくもりに触れ、押し込めてきた苦しみや悲しみが溢れ出てくるような気がしていた。
今まで、何度も彼女に触れてきた。
その度に、彼女はまるで汚らしいものに触れたような表情を見せていた。
この僕に触れられることが、そんなにも嫌なのか……。
苦々しく思いながらも、それでも彼女を欲していた。
彼女に笑いかけてもらったことなど、この15年もの間、一度もなかった。
そんな彼女が自ら部屋に訪れ、優しく髪を撫でてくれる。
今まで氷のように冷たく研ぎ澄まされた心が、みるみる氷解していくような気がした。
――イシス、僕は君さえいれば何もいらないんだ。
クフはイシスの手に触れながら、強く思っていた。
「ファラオ、ピラミッドを建造しましょう」
イシスは、クフの髪に手を触れながら呟いた。
「えっ?」
クフは解せないように、顔を上げた。