【砂漠の星に見る夢】
「後世に残るような巨大で美しいピラミッドを建造し、国内外にあなたの権力を見せ付けましょう。それが完成した暁には、皆、あなたを偉大な王だと認めるはずです」
予想もしていなかった申し出に、クフは戸惑いの表情を見せた。
「しかし、ピラミッドなど……一体誰が指揮を執る」
「指揮はヘムオンが執ります。
ヘムオンはあなたの為に過去も未来も類を見ないほどの、素晴らしいピラミッドを建造すると豪語しておりますよ」
その言葉に、クフは驚いたように顔を上げた。
「ヘムオンが、私の為に?」
「はい、私もクフ王のピラミッドを見てみたいものです」
そう言って、ニッコリ笑ったイシスに、クフは、そう言うことか、と口端だけで笑った。
「それを伝えにきたのだな、今夜はもう帰っていいぞ」
クフはイシスに背を向け、ベッドに横たわった。
「では、王が眠りについてから帰りましょう」
とクフの体を撫でた。
それは、いつも息子にして来た行為と同じだった。
『ジェドが眠ったら、お母さんはお部屋に戻るわね』
そう言って、幼いジェドの体を優しく撫でたものだった。
これからクフにも同じように接することにしよう、とイシスは思った。