【砂漠の星に見る夢】

クフはすべてを悟っているかのように穏やかに微笑して、ヘムオンを見ていた。
そんなクフの姿を目の当たりにし、ヘムオンはゴクリと息を呑み、深く頭を下げた。


「―――はい。
一度、奈落の底に落ちた経済が立ち直り軌道に乗り、上手く歯車が動くようになるまでは、7年もあれば大丈夫だと思います」


「その7年の間にはナイル川もまた氾濫をするだろう。この建造計画は氾濫期の失業にも対応できる。そうしたなら、もう飢える民衆はいなくなる。そうだな?」


そう確認するクフに、ヘムオンは目を見開いた。


もう、かつての悪王ではなかった。


民衆を思い、国を救うファラオの顔に変わっていた。


胸にこみ上がる熱い思いに、ヘムオンは目に涙を浮かばせながら、「はい」と頷いた。


クフは颯爽と立ち上がり、ヘムオンを真っ直ぐに見据えた。


「ヘムオン、そなたに宰相の称号を与える。エジプトの為に尽力してくれ」


クフはそう言って、自分の手にしているウアス杖をヘムオンに差し出した。


ウアス杖とは先端がセト神やアヌビス神の顔を象っている、ファラオしか持つことが許されない黄金の杖だった。


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