【砂漠の星に見る夢】
「それにおじいさんなんて、どこにもいないじゃない」
不思議そうに言った母に、私と雄太は「うそ」と王の間を見回したが、老人の姿はどこにもなく、王の間を飛び出して通路を見回したが、やはり姿はなかった。
「どうして……?」
狐につままれたような気持ちで目を開いていると、父はアハハと笑った。
「どうした二人共、ピラミッドの精にでも会ったのか?」
「ピラミッドの精?」
と私たちは顔を見合わせ、クスリと笑った。
「ピラミッドの精じゃなく忠実な家臣カイだよ」
「そうそう屈強な青年カイが、あんなおじいさんになってるなんて」
「でも、精悍なおじいさんだったよ」
そう言って笑い合う私と雄太に、両親は顔を見合わせ、なにを言ってるんだか、と肩をすぼめた。
「お腹が空いただろう。もう行こうか」
「うん」
私たちは大きな声で頷き、皆と共にピラミッドを出て行った。