【砂漠の星に見る夢】

「それにおじいさんなんて、どこにもいないじゃない」


不思議そうに言った母に、私と雄太は「うそ」と王の間を見回したが、老人の姿はどこにもなく、王の間を飛び出して通路を見回したが、やはり姿はなかった。


「どうして……?」


狐につままれたような気持ちで目を開いていると、父はアハハと笑った。


「どうした二人共、ピラミッドの精にでも会ったのか?」


「ピラミッドの精?」


と私たちは顔を見合わせ、クスリと笑った。


「ピラミッドの精じゃなく忠実な家臣カイだよ」


「そうそう屈強な青年カイが、あんなおじいさんになってるなんて」


「でも、精悍なおじいさんだったよ」


そう言って笑い合う私と雄太に、両親は顔を見合わせ、なにを言ってるんだか、と肩をすぼめた。


「お腹が空いただろう。もう行こうか」


「うん」


私たちは大きな声で頷き、皆と共にピラミッドを出て行った。


< 273 / 280 >

この作品をシェア

pagetop