【砂漠の星に見る夢】
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老人は歩き去る菜摘と雄太の後ろ姿を遠くから見守り、優しい笑みを浮かべていた。


「長い長い……気の遠くなるほど長い年月、ここに息づいて来ましたが、まさかここでイシス様とヘムオン様に再び会える日が来るとは思いませんでした」


……そう、お二人の交わした約束は守られていたのですね。


老人は胸に手を当てて、菜摘の後ろ姿を見つめ、そっと跪いた。


「イシス様、これから先、ネフェル様にもう一度出会えたならば、今度こそその想いを成就させてください。カイはあなたの幸せを誰より願っております」


顔を上げたときには老人は青年カイの姿に変わっていた。


カイは菜摘の姿に、かつてのイシスの姿を重ね合わせ柔らかく微笑んだ。


強く美しく優しかったイシス様。


あなたが想いを成就させたとき、私もあなたに抱いていた想いを告げることができるかもしれません。


あなたに会えたことで、長い長い年月ここで息づいてきた私の魂もようやく天に還ることができそうです。


もしかしたら今日、ここであなた方に会い、すべてを語ることこそが神に与えられた私の使命だったのかもしれません。


カイは柔らかく目を細め、そして雄太の後ろ姿を見て重々しい息をついた。


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