【砂漠の星に見る夢】
「――って本当に? どうして急に?」
眉を顰めて訊ねると、
「今年勤続15周年でリフレッシュ休暇に旅行手当ても出るんだ。
菜摘も来年は高校受験だし、海外旅行に行くなら今年しかないなと思ってな」
と得意気に笑みを浮かべた父に、ようやく納得し「ああ」と頷いた。
そう、現在中学二年この私。
来年は受験生で家族旅行じゃなくなっているだろう。
この勉強不熱心な私のことだから、名ばかりの受験生になっていそうだけど。
でも父の言うように家族で海外旅行をするなら今年がベストなのかもしれない。
そう思い『うんうん』と頷いている私の横で二つ年下の弟・雄太が目を輝かせて身を乗り出した。
「うっわぁ、初めての海外旅行だね」