【砂漠の星に見る夢】
イシスは『ふぅ』と息をつき、短剣を布で拭きとり鞘に収めた。
「だから、危険だといったのよ」
呆れたようにそう言うイシスに、ネフェルは熱い息を吐く。
「でも、刺客に感謝しなければならないな」
「えっ?」
「……こんな素晴らしい女性がこの世にいるとは思わなかった」
ネフェルは熱っぽくそう告げて、そっとイシスの頬に手を触れる。
頬に伝わるネフェルの手のひらのぬくもりに目眩を覚え、イシスは自分の頬が紅潮してくることが分かった。
……なんて綺麗な碧の瞳だろう。
彼の瞳を見ていると頭の芯がぼうとなり、胸が熱くなるような気がした。
惹きこまれる。
イシスは慌てて我に返り、自分の鼓動が強くなったことを隠すように、
「お生憎様、私は歯の浮くようなお世辞を言う男を信用できないの」
と素っ気無い態度を見せ、「それでは、お先に失礼」とネフェルに背を向ける。
「イシス!」その声にそっと振り返ると、ネフェルは屈託ない笑みを浮かべた。
「明日、またここに会いに来るよ。今日のお詫びをしたいんだ! 会ってくれるかな?」
その言葉にイシスの鼓動はまた高鳴るも、平静を装いつつ小さく頷いた。