【砂漠の星に見る夢】
ネフェルは「ありがとう」と侍女達を笑顔で見送り、机について紙を広げ――使用している紙は現代の紙とは違いナイル川に自生する大型のカヤツリグサの一種パピルスの繊維を縦横に貼り付けたものだが――ピラミッド建造の為の計算式を書き記していく。
黙々と仕事をするネフェルの元に窓から真っ赤な鳥フェニックスが入って来て、遊んでと纏わりついた。
「驚いた、フェニックス、散歩に出かけてたのか?」
ネフェルは笑いながらフェニックスの首の付け根を指で優しく撫で、引き出しから餌を取り出し、手で直接与えた。一心不乱に餌をついばむフェニックスの姿を優しく眺めていると、
「ネフェル様、メルサンク様がお呼びです」
と侍女が姿を現し、跪いてそう告げた。
「母上が?」
もう夜も遅いというのになんだろう?
不思議に思いつつも「分かった」と頷き、ネフェルはフェニックスと共にそのまま部屋を出て行った。
「…………」
ヘレスのスパイだった侍女はネフェルの姿が見えなくなったことを確認し、すかさず机の上の書面に目をやる。
やったわ、こんなに簡単に設計書を見つけられるなんて!
すぐさま机の上の書きかけの設計書を確認するものの、見たこともない文字が羅列していることに、目を丸くした。