【砂漠の星に見る夢】
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そうして夏休み。


熱血エジプトサポーターである一家の大黒柱の希望にしぶしぶ従い、小林一家はハワイを諦めてエジプトに向かうこととなった。


『飛行機でエジプトまでひとっ飛び!』と言いたいところだけどそうは問屋は卸さない。


成田からエジプトまではマニラとバンコクを経由しなくてはならずカイロまでは約二十時間もの時間を要する。つまり一日目は飛行機の中で過ごすこととなった。


「まるっと一日飛行機の中だなんて、エジプトはやっぱり遠いねぇ」


エコノミークラスの座席をできるだけ倒しながらうんざりしたように漏らすと、通路を挟んで隣に座る父は機嫌よく振り返り、


「こんなに時間がかかっているからこそ、また価値が沸くだろう?」


と白い歯を光らせて親指を立てる。


……悪いけどイラッとする。


心でそう呟いて、顔を背けた。


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