泥だらけの猫
 幸いにも立つことは出来そうであった。 

 私は捲れたスカートの裾を膝の上辺りまで戻す。

 十分過ぎるほどに雨を吸い込んだ布地は使い古された雑巾を連想させ、私はそれを少しだけ搾ったりもしたが、大して変わるはずもなかった。

 ・・・・靴は? 

 手探りで辺りを探してはみたが、ある気さえしなかったし、勿論、あることも無かった。
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