Yucky☆マニア~Special Fan book~
あの時の俺は
美織のことなんてこれっぽっちも考えていなかった。
考えるのは自分のことばっかりで
キラの脅迫とか、そういうのは何にも考えられる状況にはなく、ただひたすら自分のことしか考えられてなかった。
イラついて…たんだと思う。
不甲斐ない自分自身に
悩む価値すらない、情けない自分自身に。
暴れても暴れても
ココロの中のモヤモヤは晴れることなく、さらに怒りが増すばかり。
「何…やってんだ、俺は……。」
一通り暴れ狂って
それでも解決しない自分自身の問題に
俺は完全に疲れてしまっていた。
近くにあったロッカーに背をかけて
自分の右手を自分のまぶたにそっと当てる。
俺にはもう競泳しかないのに
美織は拓真に譲るんだから、俺にはもう競泳しか残ってないのに。
その最後の一つ
俺にとって大切な
宝物の最後の一つすら守れねぇで…、俺はいったい何をやってるんだ……。
水が重い
カラダが重い
思考回路すらもが黒くなる
自分で自分が情けない。
俺…自分がこんなにダメなヤツだっただなんて、思いもしなかった……
俺は自分はもっと強い男だと思ってた。
自分は強い男だと信じて疑わなかった。
――願いは叶う。
その目標に向かってあきらめずに努力を続けていたら、いつか夢は叶うハズ。だって夢は見るものじゃなく、叶えるために見るものだから。
そう信じて疑わなかった。
だって……
いつも水は俺の味方だったから。
どんな時でも
どんなレースの時でも
水は俺を優しく包んで、いつも俺を守ってくれていたから。