Yucky☆マニア~Special Fan book~
次が最後のレース!


そう決めた俺は…強かった。




失うもんがねぇ、って人間やっぱり強いのな。




どんなに怖くてもダメでも
次しかないと思うと、気持ちが前に向いてくる。


スランプからウソのように脱却して



もうこれ以上ない!!



そんなベストコンディションで迎えた、日本選手権当日。





大歓声の中プールサイドに出て行った俺は

『あー、これが最後なんだな~』

とか思いながら軽くストレッチをしてた。




――美織、美織…





スランプ脱出からの立役者
悪魔な幼なじみの姿を探して
ストレッチをしながらキョロキョロしてると



「…!!!」



客席で恥ずかしそうに手を振る美織の姿を発見する。





――だあーっ!俺はイヌか!!





こんな1000人近い人の群れの中でなんでアイツを見つけちまうんだよ。



自分の中の美織レーダーにガッカリしながらもう一度アイツの方向をちらりと見ると



「…拓真……。」


アイツのすぐ近くには拓真の姿があった。





何やら楽しそうに話している美織と拓真。



――アイツ…あんな顔すんのか…。



俺の前とは違う
リラックスして穏やかな表情の美織を見て、ワガママな俺は軽く傷つく。





イライラ
イライラ





中学の頃もそうだった。
仲よさそうな美織と拓真を見るたび、こういうイヤな想いを散々してきた。



散々我慢してきたこの思いと、久々にご対面するとは思わなかった。



しょうがない。
不可抗力でしょうがないのはわかってる。


だけどな??


オイ、クソ美よ…


よりによってこんな日にイチャイチャする姿を見せつけなくてもよくねぇか!!?





ムカつく!!
ムカつく!!
絶対に一泡吹かせてやる!!




仲よさそうな二人を見て
完全に闘争心に火のついた俺。




飛び込み台に立って
スタート準備をして
水に飛び込んだ瞬間



頭の中でアドレナリンが大量に流れ始めた。



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