手に入れても
「話があるんだけど、外出ようか」
「え、あ…」
「朋ちゃん、訊きたいことがあるなら本人に言いな」
「ナガサワさん…」
私の意志は確認されず、腕を取られて外に連れ出された。
そのまま、二人無言で夜の街を歩く。私の一歩前を行く彼の表情は見えず、不安になる。手は、つながれたまま。
「あの、」
「朋ちゃんさあ」
「っ、はい」
「1か月も放っておくとか鬼畜やよね」
「え…っと」
「俺、連絡待ってたのに」
嘘。「連絡して」なんてその場のノリだとばかり思っていた。ずっと前から好きで、好きでたまらなくて、諦めて、再会して。これ以上の幸せを期待したら罰が当たりそうなくらいだ。
自惚れていいのかな。