手に入れても






「楽しかった?」

「とても」

「そっか」


お互いの思惑が行き交うような、油断できない時間だった。もっとも、それを感じていたのは私だけかもしれないけれども。
彼にはいつも、すべてがお見通しなのだと思っている。



「んー…」

「どうしたの」

「今日は金曜日だよね」

「そうだね。貴重な時間」

「朋ちゃんの貴重な時間、ちょっと俺に頂戴?」


彼のいたずらっ子のような笑顔を見せられた私の脳内では緊急対策会議が開催される。

彼の真意は?
いや、単純に昔の同級生と昔話をしたいだけかもしれない。
そもそも私によこしまな気持ちがあるから悩んでしまうのだ。


大学生の貴文くんのことは、もう忘れたのだ。
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