手に入れても
カウンターで、ナガサワさんの出してくれたオムライスを頬張る。バーのメニューとは思えないが、これはメニューにはないらしい。
「おいしい…」
「ナガサワは料理もうまいんだよ」
「貴文がいきなり来て、『あれ食いたい』とか言ってくるから困るんだよなー。メニューに載ってるやつ頼めよって感じ」
「まぁまぁ。なんだかんだ作ってくれるし」
おいしい料理とおいしいお酒と、都会とはかけ離れた雰囲気に私はすっかり酔いしれた。
同時に、眠らせたはずの想いもぶり返した気がしたが、私は必死に気付かないふりをした。
大学時代から人気のあった彼のことだから。今も、きっと。