Special

―――それから

レンはあっという間に登り詰めた。

オープンしたての店ということもあるからそれは時間の掛かることではなかった。


「3番テーブル、レン指名入ります」


おれは初めの頃こそこう見えて心配性なとこがあるから店の様子を見ていたけど、よくよく考えたらおれは多分レンのことを気にしていたんだと思う。


「こんばんは。今日も会いに来てくれて嬉しいよ」
「レンがそう言ってくれるなら毎日でも来るわぁ!」
「無理しないで。会える時に会えるだけで俺はいいんだ」


レンは意外に流暢に話をする。
おれの前でのレンとは違う。

あいつなりに“仕事”と割り切って演じているんだろう。


「レン、5番もお願いします」

「ごめん。ちょっとだけ行ってくるから」
「えぇ~?もう行っちゃうのぉ?!」
「そんな顔しないで。俺は笑った君の顔が好きなんだから。すぐ戻るよ」


―――出来過ぎだ。

なんつーか・・・まぁ女はコロッと騙されるが(って言い方わりぃけど)おれから言わせれば完璧に演じていて、普段の“レン”を少しも出したりしない。


だから、心配なんだ。

いつかお前の心が壊れてしまうんじゃないかって――――
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