Special
少し前後したが、そんなレンと住むようになって間もなくの話だ―――。
「レン。おめー暑苦しい」
「……」
「一緒にいるおれがそう思うんだから、本人のお前は相当暑いだろ!!」
季節は初夏。というか梅雨入り。
湿度もあって黙っていたって肌はべたっとする位なのに、こいつときたらいつも長袖だ。
酷いときはタートルネック着てるときだってある。
「服ねぇんなら、おれの着ていいっつってんだろ!」
だけど絶対におれの半袖に腕を通すことがなかった。
初めはただ遠慮してんのかと思った。
だけどある日、そうじゃないとわかった。
「レン。これやるよ」
「え?」
おれはレンにショップの袋をポンッと投げ渡した。
「今着てるやつと、洗濯してんのと2枚しか服ねえんだろ。だから、それやるよ」
「……」
「心配すんな…そん中全部、長袖だ」
おれがそういうとレンは袋を抱き締めるようにして言った。
「…ありがとうございます」