Special
『レンの“たすけて”のサインなんじゃないかって』
由麻の言葉は俺の中で何かが崩れ掛けた。
辛うじてそれを崩壊させないのはもう一人の自分《オレ》。
それが決壊してしまった時に見える景色が怖い。
親なんて無責任だ。
女なんて汚らわしい。
友達なんて信用できない。
結局は、自分以外の人間なんて、最低だ。
――――じゃあ、自分は?
ホストをしている自分はどうだっていうんだ?
汚らわしいと吐いて言ってる女の手を取って、喜ばせるためのセリフを並べる。
仲間も誰も信用しないで、手にあるものは十分な金だけ。
堂本さん……堂本さんだけ。
俺を“人”に戻してくれる存在は…。
ガキみたいに堂本さんに依存している自分。
堂本さんの為、と言い訳取り繕ってホストを続けている自分。
―――目の前の“女”《由麻》に揺らぐ自分―――