Special
「レン!大丈夫?どこか具合悪いとこはない?」
「ああ…大丈夫…」
「そ、か…良かった……」
「ずっと、ここに?」
「えっ・・・あ、うん・・なんか、お店にいた責任者の・・・遠藤さん?だったかな。一緒に、って言ってくれて」
「――遠藤さん?」
堂本さんの繋がりで事情を知って由麻にそう言ったんだな。
俺はその名前でピンと来た。
「なんか、その、栄養失調とストレスとか…そんな感じみたいだった…よ」
栄養失調って…
昔あんだけ栄養なんて取ってなかったときは平気だったのに今頃かよ…
俺はそんな自分を自分で嘲笑った。
「由麻、もういいから」
「え?でも…」
「講義に行け」
「……はい」
俺がそう言うと由麻はそれこそ捨てられていたチビのようにしょんぼりと淋しそうに背を向けて鞄を手にして椅子を立った。
「あの、講義終わったら…また来ていい?」
「……」
「――っていうか、来るから!」
「!!」
そう最後に言い捨てて由麻はぱたぱたと病室を後にした。
――ああ、またこの匂いだけになっちゃったな…
消毒液の匂い
あの頃の痛みの、匂い―――