Special
「おれがお前を切り捨てる訳がないだろ?」
「…はい」
「支配人のおれが休んでもいいっつってんだ。ラッキーだろ」
「…すみません」
俺は自分の上にかかっているシーツをぐっと掴んでそう謝った。
「ああ、それと…」
少し気まずそうに堂本さんが何かを言い掛けた。
「…聞きましたよ、由麻から」
「そうか。悪かったな。だけど、彼女はきっと大丈夫だと思ったから…」
「お陰で大変ですよ」
そういう俺の顔からは決して本心から言っていることじゃないのは、堂本さんならわかっているだろう。
「由麻が、なんかお前に渡さなきゃいけないものがあるっつってよ…わざわざ会いにきたんだ」
「渡さなきゃいけないもの?」
「あ?まだ貰ってねぇの?」
「はい」
「やっぱりどっか抜けてるなぁ、由麻は」
はははっと笑う堂本さんにつられて口元に笑みを浮かべる。
そして俺はふと思い出して堂本さんに尋ねた。
「堂本さん、今何時ですか」
由麻が今日来ると言っていた。
仮に遅くなったとしても夕方5時位には飛んでくる勢いだった。
「今は……7時過ぎだな」