Special
「アイツ…レンが裏方で働いていた店でもある」
レンが、この世界に足を踏み入れた場所――――。
「一度、ここでレンと会ったことがある」
「……?」
「まぁアイツは覚えちゃいないだろうけど」
マサキはそう言うと、キッチンのあった場所の手前まで行って足を止めた。
「――オレの当時好きだったオンナを盗った」
「盗っ…?」
「オレの“母親”も…」
「は…はおや?」
マサキはもう私に話す感じではなく、独り言のように、何かを思い出すように語り始める。
私は耳を澄ませて聞いてはいるが、内容が全く理解出来ずにいた。
「アイツが、オレから全部奪って、壊していくからっ…」
マサキがガンッと壁に手を打ち付ける。
その衝撃でパラパラと砂が落ち、埃が舞う。