Special
「ちょ、ちょっと待ってよ!オンナとか母親とか!何かの間違いじゃ…」
「元カノはここにきてレンに惚れたんだってよ!アイツ、裏方だったくせにきっと目を盗んで手を出したんだ」
「それってただの逆恨み―――」
「“母親”は…今でもレンを指名しに店に来てる」
「ま…まさか!マサキがいる店でもあるのに…!」
「関係ないんだよ、あのひとは。昔からそうだ。自分だけがよけりゃ…」
何もかも終わったような目でマサキは笑いながらそう言った。
笑っているのは口元だけで、目は、心は、悲痛さを感じさせた。
「レ、レンに会ったって……」
「ああ。その元カノジョってやつの行動がおかしかったから付けてみたら…ここに辿り着いて、たまたまレンが裏通りにゴミを持ってきて顔を合わせたんだ」
マサキはもう今までのような余裕を感じられないくらいになっているのがわかる。
「そん時のアイツ。オレを空気のように無視しやがって!」
私は黙ってマサキを見ていた。
マサキは私の存在を忘れているように一人で淡々と話し続ける。
「名前も答えねぇ。一瞬オレを見たあの刺さるような目…あの時からオレのことを見下して、女盗って、嘲笑って―――そして今でもオレの上に立ってほくそ笑んでる」