Special

完全にマサキの勘違いだ―――。

恐らくマサキがレンに会った頃はまだレンも今のような“人”になっていなかったはず。

きっと、“マサキを見ていなかった”んじゃなくて、“誰も見ていなかった”んだと思う。


「―――違う」


私は静かに反論した。


「レンはそんな人じゃない。あなたの彼女だって盗ってなんかないし、あなたを見下したりなんかしていなかった。それは今も」

「お前に何がわかるんだよ!」

「全部あなたの被害妄想よ!」

「―――っお前ッ!!!」


マサキが怒り、早足で私の元へと戻ってきた。

だけど私はマサキを睨み返して決して目を逸らさず、逃げずにその場にいた。


マサキが埃と共に私をソファに押し倒して手を拘束する。


「痛い目に遭わないとわかんねぇみたいだな」



でも、もうマサキを怖いとは思えない―――。


< 134 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop